海外赴任になって3回目の夏の休暇で帰ってきた夫も、あまりに素っ気無い息子を訝しがっていました。
しかし、夫は部活での様子が気になってきたようで、息子の試合を見に行こうか、という提案もありましたが、二人だけで過ごす時間が欲しい、という甘えた素振りの言い訳で断り、結局夫は私のそばに居ることを選んだのでした。

その夫の気遣いが痛いほどわかるのに、夫に話せない息子との出来事が心に引っかかり、夫に抱かれるたびに不安が膨れてくるのでした。

夫が赴任先に戻り、息子の夏休みも残り少なくなったある日、私の出かける予定に合わせるように、友達プールに行くと言う息子が、やたらと何時に戻るのかを聞いてきます。
またもや息子の思いを悪いように考えて、遅い時間を伝えました。

そして、伝えた時間よりかなり早く帰ってみると、玄関に女性用らしきスニーカーがあるのです。
息子の名前を呼びながら「誰か来ているの?」と部屋のドアを開けたところ、ベッドでシーツを肩まで引き上げている息子がいました。

そのシーツからは、よく陽に焼けた細いふくらはぎと、水着の跡が白く残った丸いおがはみ出ています。驚きと同時に、思わず『頭隠して隠さず』ということわざが頭に浮かび、可笑しくなってしまいました。

「ちゃんと服を着て、二人でリビングに来なさい。早くいらっしゃいよ」、そう声をかけるとドアを閉めました。
自分としては、冷静な振る舞いを見せたつもりでしたが、実際は心臓がドキドキしていました。
それはたぶん、息子が女の子とベッドに裸でいたからではなく、つい3ヵ月前に息子と抱き合っていたのは自分だったから、かも知れません。

しばらくして、二人はリビングに現れました。
女の子の方は、息子の陰に隠れるように入ってきて、息子の歩みが止まるとその隣に並びました。
「ずいぶん早い帰りじゃん」。息子は殊更無愛想に言います。
私はそんな息子より、隣の女の子に視線が留まって動きません。

よく陽に焼けていて健康的な感じがします。
色が抜けたデニムをかなり短く切ったパンツに、もしかして、息子のものかも知れないオーバーサイズの真っ白いTシャツ。
パンツから伸びた足は長く締まっていて、背丈もあるようです。
「立ったままじゃなく、座りなさいよ」と息子のほうに顔を向けて言い、ソファを示しました。

その前のテーブルには、アイスコーヒーが入った二つのグラスが並んでいます。
私の前に座った二人はすぐに飲み物に手を伸ばしました。
あらためて女の子に目をやって気付いたのは、間違いなく年上のようです。
整った顔付きで、短めの髪が活発そうに見せています。
「初めまして、が、こんな風になってしまって、すみません」。突然、その女の子が話し始めました。

彼女は大学1年生で、息子の中学校の卒業生、中学在学中は女子バスケット部で、高校に入ってからは高校のバスケ部にいながらコーチの代理で中学生の後輩を教えていた、息子と付き合い始めたのはこの夏から、等々のことを聞かされました。
つまり、息子の4歳上。よく見ると、クリッとした目のかわいい顔をしています。

お母さんにこんなこと言うのは変ですけど、最後まではしてません」
正面を切ってきっぱりと言われると、やましい事はしていません、と言われているみたいで、私の考えって古いのかな、とも思ってしまいます。
とりあえず、親として今日のような関係は望まない、今後付き合いを続けていく場合は節度を持って、を伝え、帰ってもらいました。

息子は彼女を送ると言って出て行き、ひとり残され、テーブルの上の飲み残したグラスを見ていたら、なんだか息子を取られたような気がしてきて、再度息子を抱きしめて取り返したい衝動に駆られました。
しかし、それを戒めるように自分の情けなさも感じていて、『今日のような関係は望まない』と言いながら、自分は息子と関係を持ってしまったのです。

勝手で矛盾した話です。
そんな思いでいる中、息子は帰って来ました。
気まずいのか、真っ直ぐ自分の部屋に入ったままです。
夕飯の準備を始めましたが、あまりに音がしないので覗きに行くと、部屋は十分に暗くなっているのに明かりもつけずに、ベッドを背に床に座り込んでいました。

別にきつく叱った訳でもないのに、何をしょげているのか、ぼんやりと見えるその姿が無性に可愛く思えてきます。
そこで、何か話をしようと思い、息子の隣に座りました。

「今身長は何センチ?」
「177」
「クラスでも高い方でしょ?」
「上から5番。バレー部、剣道部、バスケ部、野球部、そして僕」
「そうなんだ。今日の彼女もけっこう高いんじゃない?」
「女で170だもん、でかいよ」
「思ったより高いのね。二人並んでたら、そんなに高く見えなかった」
「大学でも大きい方だってサ」
中学生で大学生彼女だなんて、ませてるわよ」
彼女じゃないよ。アイツ、男だったら誰でもいいんだ」

こんな風な会話だった気がしますが、最後の言葉が中学生の息子の口から出たとは思えなくて、暗がりに慣れた目で息子の顔を覗き込みましたが、その表情は読みきれません。
すると、覗き込んだ私の方を向きながら、「僕が一番好きなのは、ママだけ」と、これまでも何度か耳にした言葉。
「そんなこと、もう言わないの」と答えながら、大学生彼女より自分が選ばれたという、母親らしくない感情を覚えてしまいました。

その気持ちを見透かされたのでしょうか、息子の顔が目の前に近づくと、あっという間にキスをされてしまったのです。
そのキスが、息子を3ヵ月前に呼び戻してしまいました。

唇が離れた時、すでに息子の両腕で抱きすくめられていました。
「いけないと言われたけど、やっぱりママがいい。他の女の人じゃ嫌だ」。
この時の『他の女の人じゃ嫌だ』という息子の言葉が、記憶の底に心地よく刻まれました。

その言葉のせいでしょうか、それからのことは、態度ではっきりと拒否したかどうかはあやふやで、むしろ抱きすくめられたまま息子を抱き返してしまったのかもしれません。
真っ暗な部屋の硬いフローリングの上で、またもや抱き合って舌を絡めるキスをしてしまいました。

突然、「さっきはいきなりズボンとパンツを下ろされて、口でやられた」と、キスから唇を離した息子が話し始めました。
意味が解らない、といった表情を見せると、息子は「フェラチオ」と早口で言い、続けて「ママには僕がやってあげた」。暗がりでなければ、赤くなった顔を見られたことでしょう。

「僕はママとしかキスはしない、そう決めてる」、そう言う息子を私はしっかり抱きしめていました。
フローリングの上で抱き合ったまま、私は着ている服すべて、といってもTシャツ、デニム、ブラにパンティ、それらをすっかり脱がされていました。

私を全裸にしてすぐ息子もすべての服を脱ぎ去り、私の身体に抱きつこうとします。
その時、先ほどの会話が私の意識に残っていて、無意識にある行動に走ってしまいました。
私は覆い被さろうとする息子をさえぎり、いきり立っているペニスを両手で掴むと口に含んだのです。

夫のモノを口に含んだのは、何時かも思い出せないほど昔のことでしたので、初めはぎこちなかったかもしれません。
それでもすぐに、私の口や舌はすぐに反応し始めました。
表情はわからないものの、突然だったので息子は驚いたに違いありません。

その内に、息子の吐く息が深くなり、私の頭や髪の毛を触っていた手の動きが激しくなってきました。
突然、ペニスが喉奥深く突くかのように腰が動いた後、口の中に生暖かい液体が飛び出てきました。

そして、私の頭上で息子の「ウッ」という声と一緒に何度か口の中のペニスが小刻みに動き、その動きが止むのを待ってペニスを手と口から離しました。
感覚的にですが、かなりの量が口の中に出された気がします。
暗い部屋に息子を残し洗面所で口をゆすいでいると、すぐに息子が入ってくる音がしました。

顔を上げると、目の前の鏡には裸のふたりが映っています。
息子は背後から私の腰に腕をまわし、背中に頬を乗せました。
口をゆすぎ終わって再び顔をあげると、それを待っていたかのように背中から顔を離し、腰に回していた右手を私の中心部に伸ばし、探し出すようにひだの中をなぞってクリトリスに辿り着くと、その指先をゆっくりと撫で回し始めるのです。

少しの間があって、私が感じてきたのがわかるのか、今しがた射精したばかりなのにすでに大きくなったペニスが、私の内股に分け入って来ました。
そしてついに、息子は私の腰を持ち上げ、ペニスを挿入しようと試み始めました。
その動きを邪魔するように腰を動かすのですが、私の身体は私の意思とは裏腹に、受け入れる準備には十分なのです。
結果的には、ただ単に焦らしただけでした。

ついに、二人とも一言も言葉を発しないまま、息子のペニスは私の中に入って来ました。
そこで漏らした私の声が合図となり、私の声と息子の荒い息遣いだけが狭い洗面所で響き始めたのです。

この時も私はいってしまい、その時身体に触れた洗面台のひんやりした感触が、火照った身体に気持ちよかったのを妙にはっきりと覚えています。
しかし、また身体の中に出されてしまいました。

この日を境にして徐々にですが、息子とのぎくしゃくした関係は和らぎましたが、それと反比例するように、身体への接触が過激になってきて、それまでなかった息子の行動、例えば胸を触ってくる、スカートの中に手を入れてくる、その入れた手がさらに下着の中にまで入ってくる、あるいはペニスをこれ見よがしに隠しもせず、私の反応を楽しむかのように室内を歩き回る、といったことが頻繁に行われるようになったのです。

いくら鈍い私でも、と子という関係が危うくなってきたのを感じ取りました。
それまではあまり身に着けなかったガーターやボディスーツを、家にいるときにも着るようになったのです。

そんな日々のある日、生理が遅れていることに気付きました。
初めは、遅れている気がする、そんな程度だったのですが、10月の声を聞いて改めて計算してみると、見事に生理が止まっているのです。
考えられるのは、夏休みも終わり間際の洗面所でのセックスです。
関係を持った時はすべて身体の中に出されて、避妊についてなにも施していないので、妊娠していてもおかしくはありません。

すぐに、妊娠しているかどうかを判定する薬を購入しました。
ところが、結果が怖くて、その判定薬を使うのをためらってしまうのです。
息子に相談、いや、話すこともできず、精神的にかなり参ってしまいました。
そんな状態で無為に10月も過ぎてしまいそうになり、ついに日曜日に決断し、判定薬を使ったのです。
その結果は、妊娠していない、でした。皮肉なもので、その翌日、不順だった生理が始まりました。

妊娠していないことがわかり、本当にホッとしました。
いつも生理中は憂鬱になるのに、その時だけは妙に浮かれた気分でした。
ただ、2~3日経って不意に「避妊」しなきゃ、と思って塞ぎ込んだり、また何日か経つと正しいのは「セックスをしない」ことなんだ、と思い立ち毅然とした態度で息子と接しようと虚勢を張ったり、何でこんなことになってしまったのかを思い病んだり、情緒不安定の期間がしばらく続いた気がします。

そんな状態の中で、あの30日をありありと思い出させるような、忘れられない、しかし忘れ去りたい出来事が、再び起きてしまいました。
11月も末になった土曜日の午後、本を買いに寄った書店のショーウィンドー越しに見えたのは、なんと息子と例の女子大生の中睦まじく歩いている姿でした。
受け取った本を落としそうになるほどの驚きです。
あの夏の日以来、息子の口から彼女のことは一言も出なかったのですから。

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